このタイトルでジンをつくり始めたのは寅年の2022年。虎がモチーフの蒸留所ですし、寅年にピッタリかな、なんていう軽い気持ちでつくろうと思ったのが始まりだったかもしれません。

虎ノ門蒸留所のジンは、ジュニパーベリーを始め、季節の植物や果実の良さをそのまま出せるように蒸留するというのが一つの特徴だったので、様々なボタニカルを組み合わせるいわゆる ”ジンっぽいジン” への初めての試みでもありました。

 

 

そしてDRY GIN、なんていうものを意識し始めたのももしかしたらこの頃からだったかもしれません。いやむしろ僕自身は辰巳さんのジンが好きでそれに倣って虎ノ門のジンを蒸留していたから、自分のつくるスピリッツのスタイルにも多少なりとも自負はありました。その頃は「DRY GINなどつくらんでもいいよ。」なんて気持ちもちょっぴりあったのかもな、なんて今当時を振り返ることができます。おそらくDRY GIN自体の良さをあまり分かっていなかったのでしょう。

 

 

最初の寅年akeruは、ジュニパー、柑橘、生姜にクロモジ、スパイス、そして榧(かや)。榧の刺激とシトラスやスパイス、グリーン、ルートのバランスが良く、自身でも納得の出来でした。一方、DRY GINっぽくつくったつもりがあまりそうはならなかった、という印象も残りました。

 

 

そこから、谷口酒造の本格麦焼酎「御神火」にした「COMMON hare」や、コロナで廃棄の可能性があったY market brewingのビールを使った「YELL ALE GIN」など、原酒違いのジンを蒸留することにより、ベースアルコールそれぞれの個性の違いや重要性を学んでいきます。DRY GINもその構成要素の核として、アルコールそのものに近いニュートラルスピリッツによるものが大きいことに気づき始めます。

 

さて、あらためて「DRY GIN」とは何なのでしょうか。

 

ジュニパーベリー

ジュニパーベリーを入れた蒸留酒がジン、という極めて定義がゆるく自由なフォーマットのお酒、という認識が世界のセオリー。それではドライジン、またはロンドンドライというのはどういったジンなのでしょうか。ジンのことを探求し、イベントや海外のジンも輸入している「Gin Lab Japan」さんにお話しを聞いてみました。

Gin Labさんによると、ジンの定義はEU法というものに則り
Gin 『ジン』
Distilled Gin『蒸留ジン』
London (Dry) Gin『ロンドン(ドライ)ジン』

の三つのカテゴリーに分かれるそう。

一番大きな枠の中のGinという第一のカテゴリーには、

ジンとは、農産物を由来として作られたエタノールを元に、ジュニパーベリーを加えて製造されるジュニパー風味の蒸留酒。アルコール度数は37.5%以上。ジュニパーの風味が主体となるように、香気物質と食品香料を使用することができるなど、が書かれています。

これがいわゆるジンの定義が比較的緩く、自由なフォーマットといわれる所以のようです。

第二のカテゴリー、Distilled Ginになると、第一のカテゴリーに加えて、農産物を由来として精製された96%以上のアルコール度数を持つエタノールと共に、ジュニパーベリーと他の自然由来のボタニカルを加えて蒸留されるジュニパー風味の蒸留酒である。ジュニパーの風味が主体とされる。と、連続式蒸留機で精製される96%のアルコール度数を持つベーススピリッツ、いわゆる「ニュートラルスピリッツ」が必要とあります。

連続式蒸留機

虎ノ門蒸留所は、自然由来のボタニカルやジュニパー主体で蒸留しているにも関わらず、ベースアルコールがニュートラルスピリッツでないため、第一のカテゴリーに分類されることになります。ジュニパー漬け込みだけの蒸留していない”ジン”と一緒のカテゴリーっていうのもどうも腑に落ちませんが、本場EUだとそのようです。

さらに本丸London (Dry) Ginになると、第二のカテゴリーに加え、メタノールの含有量の制限。風味付けは、天然植物材料。着色はされない。などが加わります。

これらの項目は虎ノ門蒸留所のジン、ほとんどに当てはまりますので、唯一の問題としては第二のカテゴリーから定義される「ニュートラルスピリッツ」を使用しているかどうかで、より細分化されたDistilled GinやLondon Dry Ginに分類されることの可否が決まるようです。

そんな中、こんな言葉もありました。

完成後のジンに1リットルあたり0.1グラム以下の(転化糖と表現される)砂糖を添加しない場合に、’ジン’ は ‘ドライ’ という言葉で補完される。

より詳細を知りたければ、Gin Lab Japanさんの記事がとてもわかりやすので、こちらをご覧ください。
https://ginlab-japan.com/1104/

さらにベーススピリッツのことも詳しく書かれています。
https://ginlab-japan.com/2058/


少し長くなってしまいましたが、これらをまとめると、

・虎ノ門蒸留所のCOMMON、季節のジンは、東京島酒をベースとしているため、第一のカテゴリー「GIn」に分類される(砂糖は一切添加されていないので、Dry Ginとは言える?)

・Distilled Gin、London(Dry)Ginとは、96%以上のアルコール、「ニュートラルスピリッツ」をベーススピリッツとして、蒸留することが前提。


今回は、COMMON akeruのつくるきっかけと、DRY GINについて少し考えてみました。

次回はDRY GINについてのさらなる探求。そして「COMMON akeru 2025 巳年」について掘り下げていきたいと思います。

 

COMMON akeru

販売価格: 6,820円(税込)
ベースアルコール: 情け嶋(八丈興発)& ニュートラルスピリッツ
度数調整割水: 奥多摩源流の沢井湧き水(澤乃井仕込水)
ボタニカル: 榧、大和橘、生姜、くろもじ、
レモン、タラゴン、トゥルシー、
パクチー根、カレーリーフ(全て国産)
ジュニパーベリー、チコリルート、
他スパイス合わせて15種類
アルコール度数: 52 %
容量: 500 mL 

online store