辰年のCOMMON akeru

クラフトジン。

そのワードをちらほら聞き始めた5-6年前、自分がジンをつくるかどうかまだ決まっていなかったのだけど、蒸留所を作るためにくまなくいろんなジンを飲んだ。

今考えるととても無知で生意気なのですが、”クラフトジン”というものにその時あまりピンとこなかった記憶がある。

 

自分自身がその時ジンに対してほとんど見識がなかったこともあるが、お酒自体は結構飲んでいたこともあったので、飲み手目線からの素直な気持ちでもあるのですが、今までのものに対して、何か目の前が拓けたような感覚にはならなかった。

 

 

後で感じたことですが、それにも背景があって、同じジャンルのお酒で過去何度か既存のものから大きく変化を感じる潮流を目の当たりした、というのもあったのかもしれません。

例えば今まで飲んでいた画一的な大手国産ビールから、アメリカンIPAのホップてんこ盛りビールへのハイジャンプ。

それも今考えれば元々あるものでその時の一ブームには違いないのだが、一般の飲み手、居酒屋でとりあえずビール派の僕にとってはびっくりするような体験だった。

 

ポートランドで飲んだ”クラフトビール”の美味しさに衝撃を受け、これまで飲んできた自らの過去のビール遍歴を嘆いたり、

何やら洒落た空気漂う”ナチュラルワイン”には、醸造酒が”活きている”ということを再認識させられ自然の力を感じたのを今でも思い出します。

みたいなこともあってか、”クラフトジン”という、何やら新しそうな蒸留酒ブームにも同様の感動を期待してたのかもしれない。

 

 

アルケミエ辰巳蒸留所にて

今まで知らなかったお酒との出会いを次々と体験する中、ビールやワインと同じようにブーム化の兆しを見せるクラフトジンにははじめ同じような衝撃は持てなかったのだけど、

それでもその面白さを探していく中で、自分がジンやお酒の道に行くきっかけを与えてくれた一つが「アルケミエ辰巳蒸留所」だった。

 

それからまもなく、ジンづくりのために辰巳さんに教えを請い、郡上八幡での修行生活が始まる。

そして、辰巳さんから教えてもらったもの、感じたものをベースに虎ノ門蒸留所を作り、東京のローカル島酒ベースのジンの誕生に至った。

 

 

東京ローカルスピリッツ「COMMON」

虎ノ門のジンは素材の良さをそのままに植物の持つエッセンスを最大限に引き出す。極力シンプルにつくりながらも、ベースアルコールに頼りながら香りや味に奥行きを出したいと考える、極めて引き算的なジンだと自らは考える。

でも何度も何度も多種多様なものを使って蒸留しているとたまにこう思う。

 

そもそもジンは素材と素材を組み合わせてその調和を生み出す、とても西洋的な文化の中で生まれた足し算的なお酒。

日本に日本酒があり焼酎があり泡盛があるように、その国土の習慣や気候、植生、周辺国とのつながりなどから培われた歴史や文化がベースになっている。この国の醸造酒といえば日本酒で、蒸留酒といえば焼酎や泡盛なのだ。

 

それは日本独特の文化や美学に表される、”引き算的なお酒”。になっているように、ジンは西洋の文化の中で生まれた蒸留酒の一つ。

お酒好きなら当たり前のように大体の人が知っていることなのですが、お酒づくりに関わる上で、当たり前であるからこそあえて立ち戻って考えてみたいと今回思いました。

 

 

東京の虎ノ門でのお酒づくり

そして僕は今、日本でジンをつくっている。

 

日本の酒文化やそれを作ってきた先人、造り手たちを尊び、ひたむきにスピリッツづくりに取り組んでいる。それは全てを刷新した新しいもの、を目指すのでは全くなく、あらゆるものから学び、輔けられながら、純粋に良いものをつくりたいという先に生まれた自然のものです。

 

薬用酒ジェネヴァからドライジンへの変遷の中で生まれたジンの文化。極めて西洋的、イギリス的なお酒、いわゆる”ジンっぽいジン”に思慮を巡らせてみる。

そしてこの土地の植物の生の香りを組み合わせ蒸留したこの場所でしか生まれえないオリジナルなジン。

それが新年向けて蒸留する「COMMON akeru」です。

 

 

COMMON akeruのボタニカル

ジュニパーベリーを中心に、複数の素材を自由に組み合わせて香りのハーモニーをつくり、飲むという一連の行為の中で、複層的に変化する味わいを生み出す”足し算の蒸留酒”、ジンへの挑戦。

ベースのアルコールはレギューラジン「COMMON」で使っている八丈島の本格焼酎「情け嶋」を中心に少しアレンジしています。

ボタニカルは昨年同様15種類で構成していますが、akeruのメインとしている榧の葉をはじめ、檜の削り節、クロモジ、季節の柑橘にバランスを取るためのスパイス数種、そしてジュニパーベリーとチコリルートと、昨年、一昨年と比べてより精選しています。

 

 

辰年のCOMMON akeru

飲み方は”ジンっぽいジン”っていうことでジンカクテルの定番「ジントニック」を推しています。

実際は12オンスグラスに30mlのジン、トニックウォーターは甘さなどお好みで60ml〜more。残りをソーダで割るソニックがベストです。

 

新型コロナウイルスが5類になってから虎ノ門にも多くの外国人が来るのですが、彼らが「Gin tonic!」とオーダーしてもそれに応えられるジンっぽいジン、プラスここでしか飲めないJapan originalな部分も体験してもらいたい。

そんな思いでつくった2024年のCOMMON akeru。

 

ラベルはお正月ということもあり、めでたく豪華に金!きっと縁起も良いはず笑

 

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

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ブランドコンセプト

ジンをつくるにあたり、核になるのがベースアルコールと水。ベースアルコールには、東京の島々で日常酒として飲まれる本格麦焼酎を用います。虎ノ門蒸留所のジンは東京で代々受け継がれたきた島焼酎がベースにあります。そして、蒸留仕込みと仕上げに使うのは、東京の奥多摩源流、青梅沢井の湧き水。江戸から続く日本酒蔵の仕込みに使う水と同じもの。ひとつひとつの素材にこだわった、いつもの食事に合わせて飲める「新しい日常酒」をお届けします。

 

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