
新しい年の始まりに、ハレの日に開けるボトルとして蒸留してきた「COMMON akeru(コモン アケル)」。日々の蒸留の延長にありながら、ジンという存在そのものへの新たな問いをかたちにしてきたシリーズです。毎年、試行錯誤を重ねながら虎ノ門蒸留所としてのオリジナリティを探ってきました。
そして2026年は、午年。干支を12年の循環として捉えると、昨年から今年にかけては“陽”から“陰”へ移ろう節目にあたります。植物にたとえると、巳年までに大きく育ったものが、午の段階でいったん静かに成長を留める時期。最大限の伸長を経て、次の局面へと移行する転換点とも読み取れます。
COMMON akeruの軌跡を振り返る
そんな今年の「COMMON akeru」は、これまでとは異なるアプローチから蒸留を行いました。蒸留酒づくりにおける次のテーマへ踏み出す、その起点となる一本です。その位置づけを明らかにするため、まずは少し2022年に始まった本シリーズの変遷を振り返ります。
初めて「COMMON akeru」を手がけた2022年の寅年以降、素材構成にはあえて大きな変化を加えずにきた要素がありました。たとえば針葉樹であるカヤの個性を中心に柑橘を組み合わせ、ジンの骨格を支えるジュニパーベリー、コリアンダーシード、カルダモンなどのスパイスを掛け合わせているところ。普段の蒸留よりも多彩なボタニカルやスパイスを用いた構成で、ジャパニーズオリジナリティとジンらしさの両立を探ってきました。

その流れの中でひとつの転機となったのが、2024年の「COMMON akeru」です。ボタニカルの基本構成を踏襲しつつドライジンへの接近を試み、初めてベースアルコールの半分にニュートラルスピリッツを使いました。八丈島の本格麦焼酎「情け嶋」を単体で用いていた従来とは異なり、輪郭に明確な変化が現れました。

続く2025年の「COMMON akeru」では、従来のカヤ、柑橘、生姜、クロモジに加え、タラゴン、トゥルシー、パクチールート、カレーリーフといったボタニカルを取り入れ、さらに柑橘には日本固有種である大和橘を使用しました。その結果、日本らしさを内包しながらも、どこかオリエンタルなニュアンスを帯びたオリジナルジンにたどり着きました。

そして、昨年の2025年にはひとつの完成形と呼べるオリジナルジンにたどり着いたと感じています。現在は、その普遍性をもとに「COMMON DRY GIN」という新たなレギュラーラインの構築も進めています。試験的につくった「COMMON DRY GIN プロトタイプ」も近日リリース予定。これらについては、またあらためてご紹介します。
2026年、クラシカルで新しいジンへ
これまでの「COMMON akeru」の方向性を新ライン「COMMON DRY GIN プロトタイプ」に引き継いだ流れを受け、今年生まれたのが「COMMON akeru 2026」。
akeruシリーズの転換点として、あらためて“ジンとは何か”という問いに立ち返り、この節目にふさわしい素材の構成を試みました。

大きく変更したのは、今まで使っていたカヤとは別のボタニカルを軸としたこと。カヤがもたらしていた独特の刺激は、シトラスやスパイスとの調和において大切な役割を担っていましたが、それを取り除くことで、異なる香りのバランスを目指しました。
新たな軸となったのは、大和橘をはじめとする5種の柑橘と、バイマックルーとも呼ばれるこぶみかんの葉。以前からその香りの可能性を感じていたこぶみかんの葉を、今回は愛媛県で有機栽培する生産者さんから取り寄せ、蒸留しました。大和橘に、さらにゆず、レモン、みかん、ライムといった柑橘を重ねることで、新年にふさわしい、ささやかな贅沢を感じられる香りとなっています。

余韻に奥行きをもたせるため、さらにいくつかの素材も重ねました。スペシャルティコーヒーロースター「Allpress Espresso」のコーヒーグラインドは、強く主張するのではなく、厚みを支えてくれる存在。後半にかけて穏やかに香りを添える白樺と、ふくよかなニュアンスを感じる椎茸の出汁をほんのわずかに加えています。抜けの良いトップノートに対し、これらが加わることで、重層的な香りが生まれました。
ベースアルコールに採用したのは、長野県野沢温泉村の「野沢温泉蒸留所」で生じたフェイント。ジン蒸留の終盤に出るこの成分は、一般には廃棄されることも少なくありませんが、同蒸留所を訪れた際にその可能性に触れ、譲り受けたことが今回の使用につながりました。どこか野沢温泉蒸留所のジンに通じる雰囲気も感じられ、結果として香りにクラシックなニュアンスを添えてくれています。
こうして完成したのは、複数のボタニカルとフェイント由来のクラシックな骨格が重なり合う、新たな印象の一本。ストレートはもちろん、ソーダで割ると柑橘とバイマックルの華やかな香りがより伸びやかに広がり、その奥にあるジンらしい奥行きも感じていただけます。
そしてこのボトル「COMMON akeru 2026」は、東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2026にて最高金賞を受賞しました。 蒸留所における2026年のひとつの到達点ともいえるボトルで、このような評価をいただけたことを大変光栄に思います。
蒸留酒づくりにおける次のテーマへ向かい、またここから創めていきます。
2026年の虎ノ門蒸留所も、どうぞよろしくお願いいたします。
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COMMON akeru
| 販売価格: | 6,820円(税込) |
| ベースアルコール: | 野沢温泉蒸留所フェイント & 情け嶋(八丈興発) |
| 度数調整割水: | 奥多摩源流の沢井湧き水(澤乃井仕込水) |
| ボタニカル: | 大和橘、ゆず、レモン、みかん、ライム、 コーヒーグラインド(豆かす)、 バイマックル、クロモジ、白樺の葉、 生姜、しいたけ軸でとっただし汁、 ジュニパーベリー、チコリルート、 他スパイス合わせて17種類 |
| アルコール度数: | 49 % |
| 容量: | 500 mL |