5周年ジン seiとdak

2025年6月、虎ノ門蒸留所は5周年を迎えました。この節目にお届けするのが、2種類の特別なジン「sei」と「dak」です。

私たちが虎ノ門という地で蒸留を続けている理由。周年ボトルをつくる時期は、毎年その根源に立ち返るタイミングでもあります。 

東京という都市にも、今や多様なジンが溢れています。次々と蒸留所が生まれるなか、新しいものをつくるとはどういうことなのか。つくり手として、どのような姿勢で時代と向き合い、何を手渡していけるのか。  

虎ノ門蒸留所は、都市のただなかにありながらも、農や自然とともにある人々の営みを伝える拠点でありたいと願っています。そんな想いのもと、一年間の蒸留の軌跡をかたちにしたのが「sei」と「dak」です。 

 

 

「清」と「濁」

蒸留に用いるのは、自然のリズムに従って育った植物たち。無化学肥料、無農薬、不除草……なかには、月の満ち欠けと栽培を呼応させる農法で育まれた果実も含まれます。

時には、旬を迎えた畑を訪れ、収穫に参加させていただくことも。毎年の対話を通し築いてきた関係性が、私たちのジンづくりの土壌でもあります。

キンモクセイ採取

一方、今年は気候変動の影響を特に強く感じた一年でした。収穫量が不安定となり、例年のようにご一緒できなかった農家さんもいらっしゃいます。

それでもなお、大地に根を張り、実を結ぶ植物たち。その営みを見守り、育て、私たちに託してくださるつくり手の皆さんの姿に、あらためて自然とともにあるものづくりの本質を見つめ直す機会をいただきました。  

秩序にある美しさと同時に、揺らぎや不確かさにも目を向けること。今年の周年ジンは、そうした思考から「清」と「濁」という対照的な概念を軸に据えました。

 一見相反するようでいて、どちらも欠かすことのできない存在。両者が共存することで、より奥行きが生まれる構造は、自然や人間のありよう、そして都市に生きる私たち自身にも通じるものだと感じています。  

リラックスを促し、開かれた関係を育む「清」の側面。一方で、酩酊や身体への負荷といった「濁」の気配もまた、お酒の一部。清濁を併せ呑むとは、そうした両義性を否定せず、まるごと引き受けるということ、なのかもしれません。  

こうした思考を重ねながら、ジンという自由な手法だからこそ可能なかたちで、ローカルな素材の物語を伝えることを試みてきました。

 

 

5周年特別ジン「sei」 

今年手がけた19種類のボトルをブレンドし、虎ノ門蒸留所の一年を象徴するボトルに仕上げた「sei」。その年に出会った素材が織りなす複層的な香りには、過去の記憶と未来の兆しのあわいに立つ「今」が宿ります。

5周年特別ジン sei

使用した植物や果実は、昨年と同じ64種類。けれども育ち具合や天候、蒸留の加減といった微細な差異によって、全く新しい表情を描きます。同じボトルは、二度と生まれない。それが、自然とともにあるジンづくりのリアルであり、面白さでもあるのです。  

ジンは一般に熟成を必要としない酒とされていますが、実際は経年によって香りや味わいがゆるやかに変化します。アルコールが穏やかに抜け、水と馴染むことで、ボタニカルの輪郭は溶け合い、香りは丸みを帯びていく。  

グラス内でも、時の流れのなかでも移ろう余韻を感じていただける一本が完成しました。

 

 

5周年特別ジン「dak」 

沖縄県産のパイナップルと青唐辛子を軸に据えた「dak」は、残暑の熱を払うような、清々しさとエッジを効かせたジンです。 

5周年特別ジン dak

このボトルには、虎ノ門蒸留所の1年間の試行錯誤と発見が詰まっています。プライベートボトルの制作、ボタニカルとの出会い、日々の蒸留で生まれる小さな問いの数々が、いつも新たな着想へと繋がっていきます。  

今年特に挑戦したのは、酸のニュアンスの表現でした。蒸留プロセスでは酸味そのものを直接残すことはできません。だからこそ、リンゴやホエイといった素材を使い、香りに“酸っぽさ”を留める工夫を重ねました。  

5周年ジン dakのボタニカル

そのなかで今回出会ったのが、爽やかでフルーティーな香気を湛えるパイナップルと、青く尖った個性をもつ青唐辛子の組み合わせです。

奇しくも、昨年の周年ジンにもハラペーニョを用いており、この“チリ”の要素の継承は、新たな香りの探求を後押ししてくれました。ジンの骨格に遊び心が光る、虎ノ門蒸留所らしい一本です。

革新はいつも、日々の積み重ねから生まれる。

そんな原点を、そっと思い出させてくれます。  

 

 

6年目、変わるものと変わらないもの。

周年ジンは、私たちにとってただの記念酒ではありません。その年の自然や人との出会いを振り返り、そこに宿る気づきを、未来へ手渡していく記録でもあります。 

清と濁。

相反するようで、どちらも欠かせない一部。これからも、変わらない営みからふと立ち上がってくる変化を見つめながら、日々蒸留を続けていきます。  

6年目の虎ノ門蒸留所も、どうぞよろしくお願いいたします。

5周年ジン

 

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5周年ジン sei

販売価格: 6,820円(税込)
ベースアルコール: 情け嶋(八丈興発)、
羽伏浦(新島酒蒸留所)、
清酒焼酎(井上酒造)、
ニュートラルスピリッツ
度数調整割水: 奥多摩源流の沢井湧き水(澤乃井仕込水)
ボタニカル: ティムールペッパー、河内晩柑、カモミール、りんご、みかんの花、ぶどう山椒、生姜、ラベンダー、エルダーフラワー、レモンバーベナー、レモンバーム、くちなし、ブラッドオレンジ、コリアンダーシード、月桃の葉、パッションフルーツ、クロモジ、やぶニッケイ、レモングラス、摘果みかん、ケクロモジ、ローズマリー、赤丸薄荷、白樺の葉、金木犀、青甘夏、和薄荷、酒粕、カルダモン、クローブ、榧、新生姜、ヒノキの葉、ホーリーバジル9種、大和橘、ピンクペッパー、レモン、タラゴン、カレーリーフ、パクチー根、タンザニアカカオ、オールスパイス、ドライジンシャー、アンゼリカ、ネーブルオレンジ、青リンゴ(グラニースミス)、ホエイ、はっさく、月桂樹、シナモンリーフ、不知火、紅はっさく、いちご、ジュニパー、チコリルート
計64種類
アルコール度数: 48 %
容量: 500 mL

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5周年ジン dak

販売価格: 6,820円(税込)
ベースアルコール: 情け嶋(八丈興発)、
羽伏浦(新島酒蒸留所)、
ニュートラルスピリッツ
度数調整割水: 奥多摩源流の沢井湧き水(澤乃井仕込水)
ボタニカル: パイナップル(沖縄)、青唐辛子(千葉)、河内晩柑(愛媛), 榧(高知)、ライム、生姜、ジュニパーベリー、チコリルート、コリアンダーシード他スパイス数種、計12種類で蒸留
ふきのとう、クロモジ、ミント等で蒸留したジンをブレンド
アルコール度数: 50 %
容量: 500 mL

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